12月19日(土)、朱雀キャンパスにおいて、公開講座『シネマで学ぶ「人間と社会の現在」』を開催いたしました。
この講座は、本学の人間科学研究所・生存学研究センターが主催しているもので、今回は、前回の「ゆれる」に続き、シリーズ3「親密だから見えないこと―『羅生門的現実』を生きる―」の第2弾となります。テーマは、恋人や家族という関係の人に対して持つ「秘密」であり、それが織りなす人間関係の層の厚さを臨床人間学や人間科学の観点から読み解いていく。上映されたのは、黒澤清監督、香川照之・小泉今日子主演の『トウキョウソナタ』で、映画を利用した「シネマエデュケーション」の試みの1つとして、人間と社会の今後にとってのアートが持つ創造性や触感性、破壊性などについて考えていくことを目的にしています。
映画では、主人公である平凡なサラリーマンの竜平がある日突然、長年勤め上げた会社からリストラを宣告されてしまう。一方、世の中に対して懐疑的な心を持つ長男、ピアノを習いたい次男、一家のまとめ役だったはずの妻にも異変が起き始める。テーマは「家族の再生」。
今回の対談は、中村正教授(産業社会学部・応用人間科学研究科)と望月昭教授(文学部・応用人間科学研究科)」の2人で行われました。中村教授は、『羅生門的現実』というテーマに関して「現実は多元的であるので、それぞれの人の見方によって、何が起こっているのか分からなくなる」と述べた上で、「ある瞬間の出逢いの中で『家族』という厚みをなしたものが出来ている。しかし、それぞれに複雑な背景を抱えており、家族は『やり直す』しかないのである」と語った。また、望月教授は「この映画を通して見えてきたのは、家族の再生のきっかけは母親であるかもしれない、ということだ。家族の関係性の治療薬は無いので、自分たちでどうにかするしかない。しかし、朝ごはんなどの些細なことでも家族は再生できるのだ」と締めくくりました。
次回のシネマで学ぶ「人間と社会の現在」は、2010年1月30日(土)13:00~、朱雀キャンパスで行われます。映画『ハッシュ!』を取り上げ、橋口亮輔氏(『ハッシュ!』監督)と河口和也氏(広島修道大学教授)の対談もありますので、ご興味がございましたらぜひご参加下さい。
対談風景や会場全体の様子はこちらをご覧下さい。