早友会の大森秀高技術発表会担当幹事('75理工)からレポートが届いたため、以下のとおり掲載する。
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令和元年5月19日日曜日,晴天で気温25度を超える夏日のなか,大阪梅田キャンパス多目的室で講師を含め会員・非会員あわせて29名の出席者により,第6回技術発表会が開催されました。
今回の技術発表会は,『早友2号』発刊記念講演会を兼ねて,同誌執筆者から5名による講演を予定しておりましたが,早川会長が急病で入院され,また,樫本氏も急用で欠席されることになり,掲載論文執筆者3名の講演と担当幹事の技術報告というプログラムとなりました。
発表はPPTを用いて各講演者質疑を含め40分の持ち時間で,14:15分に開会しました。
開会挨拶は,技術発表会担当幹事の平野氏より早川会長の奥様で会員の早川明子様から今朝届いたメールにて先生のご容態および技術発表会の開催に当たって先生が期待されているという報告があり,続けて,第1講として『早友2号』第1章「防災問題を考える」に掲載の「南海トラフ巨大地震-広島県が対応すべきこと」(p.35~42)をご講演いただきました。広島県の防災拠点となるべき施設の大半が広島市内の沖積層デルタ地帯に集中しており,南海トラフ巨大地震発生時にはその機能が阻害されるリスクが高く,広域防災拠点として不適であり,ふさわしい場所として東広島市の広島空港近傍を提案されています。
第2講は,岐阜県各務原市教育委員会の西村勝広氏より第4章「土木技術史を考える」の「坊の塚古墳の築造工法-発掘調査で判明した新事実を踏まえて」(p.97~101)をご講演いただいきました。坊の塚古墳の埋葬者は未定であるが,規模的には墳長120mあり岐阜県下2位の大きさであることから,相当有力な地方豪族であったと推定されている。現状はかなり盗掘されており石槨の蓋石まで法面途中に放り出されている状況のなか,トレンチ掘削による第1次から第4次にわたる発掘作業で,墳丘規模および構造(後円部3段築盛(+基壇),前方部2段築盛(+基壇))が確認され,木曽川泥流堆積物に起因する地形の高まりを利用していること。墳丘の法面勾配や小段の設置等安全な工法が採用されていること。等,新たな知見が報告されました。ご講演の後,古墳の方向に関する質問や盗掘時期,円筒埴輪の生産地等についての質問が続きました。
第3講は,国土交通省i-Construction委員会委員の立命館大学建山教授のご講演で,第2章「建設業における問題を考える」の「建設技術の新たなステージ~i-Construction~」(p.63~68)より,建設業の体質改善に向けてICTの積極活用による生産性の向上が必要不可欠であること。土工を主眼に測量から始まる3Dデータ活用と情報化施工,重機制御の高度化(MG・MC),ICT活用によるマネジメントの精緻化,等i-Constructionの取組みが解説され,舗装工や浚渫工へ拡大されてきており,i-Constructionが省力化,作業の合理化,作業時間の短縮,安全性向上を実現し,生産性向上と環境負荷低減を確立させて,希望にあふれた新3K(高給料,休暇,希望)の産業に体質改善の施策であることを熱くご講演いただきました。また,大手ゼネコンのみならず地方ゼネコンや専門工事業者での取組みについても聴講者からの質問に答える形でご説明いただきました。
最後に,技術発表会担当幹事の大森より,『早友2号』の最後に掲載されている早川先生の「日本の科学技術史」(p.102)をうけた形で,平成30年度科学技術白書に掲載されている「身近な科学技術の進歩」の10テーマを報告させていただきました。放射線の電離作用や透過作用を活用した技術や,AIなどのITを活用したもの,光ファイバーの活用,量子力学の考え方の活用により進化した技術等を解説しました。「男性用紙おむつ」や「高齢者用足袋型ウォーキングシューズ」は実感させられるテーマでした。
4つの発表の後,再度,質疑応答の時間を取りました。その中で,仁徳天皇陵を含む「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産登録されたことにも関連して,古墳を見る場所はどこなのか?や人間の繊細な感覚での掘削技術(ニューマチックケーソンでの自動掘削の限界)等の質問が多々あり,また,今後の書籍「早友」の方向性,技術発表会のテーマ,会員参加者の拡大等についてもご意見をいただきました。
最後に,大森の閉会挨拶をもって予定通り17:30分閉会となりました。
今回は,会員および非会員の皆様にたくさんご参加いただき,活気にあふれた技術発表会となり,ありがとうございました。次回も多数の方のご発表およびご聴講をよろしくお願いいたします。