関東立電会の米澤正勝幹事('61理工) より、第17回関東立電会総会開催のレポートが届きましたので、下記のとおり掲載いたします。
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第17回 関東立電会(関東在住・電気卒OB会)を11月18日(土)開催致しました。
今回は特別に伊藤博行様(’74年 理工学部・機械工学科卒、ANA前・代表取締役副社長、現在:17年4月~ANA総合研究所シニアフェロー、11月~三菱重工業(株)顧問、立命館大学校友会・本部副会長)にお願いし、工場見学の後、講演を頂きました。
関東立電会の出席者は、以前は48名と多数の時も有りましたが、此処10年間は20名前後でした。今回は ①伊藤様のご講演、②ANA羽田機体整備工場見学、と言う2大イベントのお陰で久し振りに出席者は42名となり、盛会でした。
当会の川添雄二会長(’56年卒)が体調不良で欠席された為、幹事の米澤正勝(’61年卒)が代わって開会挨拶を行い、今回の開催に当たり大変お世話になりました伊藤様とANAスタッフの皆様のご協力に感謝の意を表しました。次いで学園の近況報告を川端良尚教授(’94学部、‘99院博士卒)より、OHPを用いて基礎、応用実験機材、各種研究、等のご紹介を頂きました。
立命電友会からは瀬見英利会長(’69年卒)より沖縄・九州支部、関東立電会の2地区以外に東海支部設立を検討中、等 電友会の活動状況の説明を頂きました。
その後、ANAカフエテリアに移動し、ANAスタッフの方がご用意頂いたお弁当を頂きながら、歓談の一時を持ちました。
食後は再び会議室に移動し、ANA マネィジャー様より、羽田ANA機体工場の概要説明をOHPを用いてご説明頂きました。ANAの原点は数名で始めた日本ヘリコプター(株)ですが、その後、発展を重ね、現在は世界のエアライン売上高で第8位にランクされている由です。(Top3:アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド)。ANA航空機機種数は257機の由です。航空機の整備はANA全社員15800名の内1400名が整備センターに所属し、関係会社を含めると合計4500名で、年間140機(平均工期:2週間)の整備を実施されている由でした。その後、3班に分かれ、ANAスタッフ3名の方々による、親切、ご丁寧なるご案内で、機体工場(格納庫)を見学、機体整備工場や機体の各種パーツの大きさに圧倒されました。
再び会議室に戻り、伊藤博行様より「ANAに於ける航空機整備」と題してご講演を頂きました。伊藤様は「ANA世界最高峰の安全管理とリーダーシップ」に就いて具体的事例を挙げて機体整備とリーダーシップの重要性を判り易くお話頂きました。
1) JAL御巣鷹山事故
事故発生日:1985年8月12日 乗客:509名、乗員:15名、負傷者:4名
当初、各報道機関は「尾翼固定リンクの欠陥」が事故原因と報じていました。当時、伊藤様は「整備」から人事異動で「広報」に所属されていました。航空会社の広報で伊藤様は唯一の技術系者でした。同時期に各報道機関から、伊藤様にも事故原因に関して問い合わせがありました。伊藤様は種々の経験から「隔壁」破壊が原因では無いかとコメントされた。その後の「航空事故調査委員会」の調査結果、「隔壁」破壊が原因と判明しました。伊藤様の判断が正しかった事が証明された。結論として、事故原因は1978年6月2日に起こった「しりもち着陸事故」時に発生した「隔壁破壊」に対する「隔壁修理ミス」でした。
2) ANA重大事件
事件発生日:2011年9月6日 ANA140便 沖縄発 羽田行 乗客:112名、乗員:5名
高度12000m飛行中、機長が化粧室へ行き操縦室に戻る時、事故が発生。
事故内容:副操縦士がコクピットドア開閉スイッチを確認せず、誤って方向調整スイッチを操作。機体が傾き、大きく降下した。又、事故の報告が遅れ、必要な点検無しで該当機を飛行させた。
原因:操作マニュアルではスイッチ操作の際、目で見て確認する事になっていたが、
副操縦士はスイッチを見ずに、慣れで操作をしてしまった。
対策:
①マニュアルに書かれている事には理由がある。マニュアルに決められた事の確実な実行。
②報告、特に悪い報告は早く、正確に、誠実に実行する。
3) バッテリー事故
バッテリー電極間のセパレ-タ内の異物で、電池がショートする事故が発生する機体が判明。当時、整備も管掌しておられた伊藤様が、部下よりバッテリー事故発生機体の報告を受けた。同時に運航部門からは同種機種に対して、点検可能な羽田へ戻る便だけでも飛ばさせて欲しい等、海外を含め5フライトの承認を求める要望が強く出てきた。伊藤様はANAの「安全管理」を優先させ、リスク管理として、中途半端な判断ではなく、全て5フライト中止の指示を出されました。若し、一部でもフライトを許可し、事故が再発したならば、ANAは安全軽視会社とみなされ、信用が失墜する事が想定されるだけに、トップのリーダーシップ発揮の重要性を説かれました。
質疑応答でも丁寧にご対応頂き、「安全、安心、信頼」のANAの実情をご説明頂き、有意義な講演会でした。 出席者全員、満足した「総会~機体工場見学~講演会」でした。