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長期投資で日本を蘇生させよう2012年6月29日

澤上篤人(さわかみ投信株式会社代表取締役)
2011年09月03日 立命館公認会計士校友会総会

実体経済の成長 投資や経済を考えようとしたら、150年くらいの時間軸をとりたいものです。そして、そこに流れている変わらないトレンドをしっかり捕まえることが大事です。その上にたって、変わるトレンドを見ます。
 そうすると分かるのですが、過去150年くらい世界経済は年でならすと4%成長しています。統計はとれないが、きっと産業革命以来ずっとそうなっているのではないかと思われます。
 世界経済の成長は人口増加と並行しています。1900年には地球上の人口は約16億人でした。これが1970年には38億人となり、2011年には69億人となっています。そして2050年には91~100億人になると予想されています。このように、人口が増えれば経済は成長するに決まっています。すなわち年4%成長には、そういう裏付けがあるのです。

実体経済から乖離する金融経済 金融は本来、実体経済につかず離れずの関係にあるはずのものです。しかし、それがどんどん乖離してきました。金融の一人歩きがはじまったのです。きっかけは、1971年のニクソンショックです。そこでは金とドルの交換が停止され、為替が変動相場制に移行しました。さらに、引き続く石油ショックでは、世界経済が大混乱をきたし、すごい景気後退とディスインフレが起こりました。そこで、対策としてとられたのが流動性の供給でした。すなわち過剰流動性で、先進国を中心にお金を大量にばらまいたわけです。
 アメリカがようやく石油ショックからの回復を宣言したのは、1992年の8月のことです。それまで資金をばらまき通しました。景気もよくなってきたので、そろそろ過剰流動性を吸収して、金融を正常化させなければと、1996年ごろから真剣に検討されはじめました。ところが、その矢先に2000年のコンピュータの誤作動問題が持ち上がってきました。ひとつ間違えると世界経済は大混乱に陥る。それを未然に防ぐためにと、1998年ごろから2000年の初めまで、さらに資金が世界中でばらまかれました。2000年問題も無事クリアしたので、そろそろ過剰流動性を本格的に吸収しはじめたら、ITバブルが崩壊し、2001年には9.11が起こりました。それが尾を引いて、今日まで過剰流動性が続いています。

金融経済肥大化の動向 1970年代後半から世界の年金運用が本格化しました。それで、世界中の株式市場、債券市場は大活況を呈しました。米国株市場でみると、80年代90年代と20年間にわたって年10数%の上昇を記録しました。
 しかし株価上昇ピッチがあまりに早かったので、さすがに2000年に入ってからそう上がらなくなりました。そこへ登場したのがヘッジファンドでした。たとえ株式市場のリターンが年1%でも、5倍とか10倍のレバレッジをかければ、年5%とか10%の成績になるという考え方です。あるいは、金融工学を駆使して年7%とか10%にまわる金融商品を作ってしまえということになりました。それが証券化商品で、いわゆるバーチャルマネーを手当り次第に創出していったわけです。それやこれやで、金融の膨れ上がりはどんどん加速していき金融バブル発生となりました。そしてついに、サブプライム問題やリーマン・ショックがおこり、金融バブルは破裂し各国はあわててさらに大量の流動性を供給するに至りました。

実体経済に目を向けると 世界経済はいま金融バブル崩壊の後遺症に喘いでいます。証券化商品などが複雑に絡みあってのマネーゲームだったので、金融バブルの後始末は大変です。
 ところが、みんな実体経済に意識がいっていません。実体経済はまさに人々の毎日の生活に根ざしています。みんな100年に1度の危機だといっていますが、皆さんの生活は何か変わっていますか。何も変わっていませんでしょう。かつて石油危機の影響は生活に直結していましたが、今回の金融危機で何ら生活は変わっていません。だから、金融バブル崩壊でどうのこうのは、もう放っておきましょう。むしろ意識しなければならないのは、人口増による世界経済の上昇トレンドです。このまま人口増が続くのですから、いずれはエネルギー、工業原材料など資源の枯渇が生ずるでしょう。それでも、世界中の人々のより豊かな生活への願望、つまりモノへのニーズはどんどん高まっていきます。その先は、インフレが見越しうるわけです。

リスクはチャンス 次に年金ですが、これからいろいろ問題が出てきます。いまから準備をしておきましょう。年金制度があるのは先進国だけです。そして先進国ではどこでも高齢化が進んでいます。今後は積み立てオンリーの時代から取り崩しの時代へと移行していきます。つまり年金資産はこれから減少基調です。ということは、年金積み立て金増加で買われる一途だった債券市場は、これまで黄金の日々だったのですが、そろそろ崩れると考えてよいでしょう。
 この30年間にわたって、世界の金利はずっと下落してきました。すなわち債券価格が上昇してきました。ところが流れが変わろうとしてきています。債券が値崩れをはじめると、いつも一方通行的な下落となります。金利の急上昇が起こります。その結果、国債価格が下落し、「年金や預貯金は大丈夫か」と大騒ぎになるでしょう。
 そういった問題が起ると、やっかいです。しかし実体経済はならしてみると今後も年4%成長を続けていくのです。すなわち、変わらないトレンドは人々の生活であり、それに応じた世界経済の成長のはずです。株価はそれより大きな10%成長を、ずっと続けてきました。確かに株価はなにかある毎に暴落もありました。でも長期に見れば、そして銘柄を選べばこの実体経済の成長に見合って、あるいはそれを超えた成長を期待できます。
 こういった状況ですから、さわかみファンドは債券を買いません。株をどんどん買っています。たしかに、金融の時代はマウスをクリックするだけで数字上は大儲けでき、金融市場はその実体以上にかさ上げされていました。しかし、実体経済は簡単にかせげません。じっくりしっかり長期を見通す必要があります。

実体経済に注目すべし これから、欧米の銀行も相当に厳しい経営環境が続きます。日本の銀行、保険会社も大変でしょう。でも私は、第一に実体経済から一歩も離れなければ、なにも心配いらないと申し上げたい。そして、第二に日本経済を元気にするには、みんなでお金を10万円ずつ使いましょうと申し上げたい。そうすれば、12兆7000億円の追加消費が生じて、日本経済は3.6%以上の成長が可能になるはずです。ところが、最近の日本経済ではこれがワークしていません。成熟経済への移行過程にあるといえるでしょう。
 高度成長時代には、みんな必死に働いてモノを買いまくりました。日本の高度成長はそれが最大の要因です。みんなが豊かな生活にあこがれ、お金を使いまくりました。それで、経済が成長したのです。ところが今や欲しいモノはすべて手に入った。その横で、お金は有り余っているのに、さっぱり使われていないのです。そこで成長が止まってしまっています。

いい会社に長期投資しましょう 日本経済が成熟化したいま、有意義なお金の使い方はないでしょうか。それは、一つには長期投資をすることです。消費もいってみれば投資です。発展段階には「見えるモノ」を消費=投資してきました。一方、成熟段階では、企業への投資が大事になってきます。将来を築くのはいつも事業家、そして個人です。ですから、その事業への応援株主になりましょうといっています。いい会社のいる社会に住みたい。だからいい会社に投資するのです。
 えげつない会社ではなく、まともな経営をしている会社。そういう会社に投資します。 昨今、そんなきまじめな会社、生活者に優しい会社の株価が暴落しています。ですから、そこへ投資するのです。つまり、生活者にとって大事と思える会社の応援株主になるのです。自分たちの将来の豊かな生活のために投資しようというのです。そんなわけで、我々は、たとえば消費者金融会社などには投資していません。それが長期投資の考え方です。
 年金は、運用成績を毎年毎年チェックされるため、どうしても短期志向に陥りがちです。一方、我々長期投資家は世の中にお金をまわした結果としてのリターンを求めます。株を買うことによってお金を回して、自分たちの住む社会を良くしていくのです。
 個人金融資産は1960年にはいくらだったと思いますか。1960年の日本経済の規模は20兆円で個人金融資産は17兆円でした。それが1990年にはそれぞれ、570兆円と1000兆円、2011年にはそれぞれ478兆円と1460兆円となりました。ちなみに、個人金融資産は1567兆円がピークでした。
 それにしても経済規模より遙かに多い個人金融資産というのはどういうことでしょう。日本経済と比べて金融資産だけが膨らんだのは、中身はカスカスだということです。たしかに預貯金だけがやたらと増えました。それはお金を使わなくなったからです。しかし、これから貯蓄率低下で金融資産は減少に向かいます。貯蓄率は1975年の23%をピークに低下を始めたものの、バブル崩壊直後でもまだ15%ありました。それが、急速に減少をはじめ昨今は2.3%にまで低下しています。それでも760兆円という預貯金は、GDPの1.6倍あるのです。
 貯金をせずにお金を使えば成長できるのに、そうなっていません。新しいモデルを作らないといけないわけです。そこで我々が長期投資を提案しているのです。
 最後に、長期投資で応援していきたいいい会社とは?まずは、10年後、20年後にこういう社会を築きたいというイメージを具体的に描きます。そうすると、エネルギーや代替工業原材料、食料、水などを世界に供給する企業が浮かび上がってきます。世界中の人々の生活に絶対欠かせない企業群を熱く応援していく長期の投資を目指しています。


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