2015年11月7日(土)・8日(日)に「2015年度立命館大学校友会 復興支援事業 東北応援ツアー 福島県コース」が実施され、全国から18名の校友と福島県校友7名が参加した。
東日本大震災復興支援特別委員会から石井英幸委員(’95・文)と仲川将史委員(’06・法)が参加し、両委員はツアーコーディネーターを務めた。
【1日目】
1日目は第1原発事故による全町避難が続く浪江町を訪問し、浪江町役場の金山復興推進課課長補佐兼情報統計係長から「なみえ復興レポート」という資料を元に、浪江町の概要や現状、東日本大震災の被災状況や復興に向けての歩みについての説明があり、参加者達はメモを取りながら真剣な面持ちで耳を傾けていた。
続いて、参加者は金山課長とともにバスに乗り込み、浪江町内を車窓から視察した。
バスの車窓からは、崩れた家屋、草が生い茂って人の気配がない街並、そして除染で取り除かれた土が入った黒い袋、そして津波で大きな被害を受けた沿岸部など、復興にはまだ程遠い光景が広がり、参加者たちは言葉を失っていた。
「実際には浪江町を訪問して、4年、もうすぐ5年が経とうとしているのに、復興はおろか復旧にさえ手をつけることができない状況があることを知った。テレビや新聞などの情報で被災地の現状をある程度は理解しているつもりだったが、実際に目で見た惨状は、想像をはるかに超えていた。震災のこと、そしてこういった状況の被災地があることを忘れてはいけない。もっと多くの人に知ってもらいたいと強く思った」と参加者からはコメントが寄せられた。
浪江町の視察のあと、次の視察場所へ向かうバスの車内では、福島県のテレビ局勤務の校友から提供のあった、東日本大震災に関するDVDが上映され、参加者達は熱心に東日本大震災について学ぼうと真剣に見入っていた。
次に、かつてはサッカー日本代表の合宿などに活用されていたナショナルトレーニングセンターである「Jヴィレッジ」を訪問し、上田栄治副社長と山内正人総務グループチーフから同施設の説明、震災時の状況や当時の状況、そして今後に向けてのお話があった。
震災発生後、原発事故の対応拠点となり、サッカーフィールドは芝生が取り払われ、今は電力会社の宿舎や駐車場として使われている。山内チーフの「私たちにとって、サッカーフィールドは神聖な場所です。選手以外の人間は、立ち入ることすら憚られるような場所なのです。それが今は芝生がはがされて車が何台もとめられ、臨時の宿舎が建てられているなんて…」と説明の合間につぶやいた言葉が印象に深く残った。また東京オリンピックの代表選手たちの練習場として2019年の再開に向け、除染が始まるという説明があり、参加者達は震災が与えた影響について深く考えている様子だった。
その後、一行は宿舎の「スパリゾートハワイアンズ」に移動し勉強会を行った。
勉強会ではスパリゾートハワイアンズで震災発当時の支配人の下山田氏から(現常磐興産株式会社業務改革室室長)に、宿泊客を全員無事に帰宅させた話などを含む震災直後の状況や、ハワイアンズが再開するまでの話などの講演を頂いた。
当事の従業員達の「お客様を第一に」と考えた行動などや、施設再開への道のりの話に参加者達は深く聞き入っていた。講演の後には質問も受け付けられ、下山田元支配人はその一つ一つに丁寧に答えていた。
勉強会の終了後、会場を移して交流会が開かれ、福島県校友会の桑原勇健会長の乾杯の発声で会は始まった。
懇親会では、元日本代表で海外のリーグを経験し、現在は日本で活躍中のサッカー選手、松井大輔さんから寄付されたTシャツが配布され、「東北応援ツアー」の趣旨に賛同した松井選手のご家族から、このTシャツの寄付の申し出があった経緯や松井さんの被災地に寄せる思いなどが説明された。
また福島県校友から、地元のお酒の差し入れがあり、卒業年・卒業学部、在住地などの枠を越えて参加者は大いに懇親を深めた。最後は仲川委員のリードのもと応援歌を斉唱し、交流会は盛会のうちにお開きとなった。
【2日目】
2日目は最初に「あかい菜園」を訪問した。
コンピューターで管理された栽培施設は、環境管理を自動化しているため、その分トマトの成敗管理に集中して作業ができること、施設の管理を徹底し、害虫の駆除にもできるだけ薬剤を使用しない方法で高品質で安定したトマトの収穫をしていると説明があった。その管理統制力と技術力の高さに参加者達は感心しきりの様子だった。
また放射性物質への対策として、「栽培他、施設での使用水を水道水へ変更」「栽培資材、苗の全量入替」など安全に最大限の配慮をしていること、生産している福島県いわき市平では「放射線量測定値が比較的低レベルであること」「栽培に使用している水道水が安全であることが市の測定結果で確認されていることも説明された。
その風評被害に打ち勝つための努力に参加者達は「福島の野菜が安全であること、そして実際に食べ、その美味しさを知った。これからはどんどん福島の野菜を買いその美味しさと安全性を周りに伝えていきたい」と感想を口々にした。
次に「『環境水族館』アクアマリンふくしま」を訪問し、塩見俊夫副館長から、東日本大震災時の状況、海獣や鳥類を他の水族館や動物園へ緊急移送(避難)させた話や、震災の影響で燃料等が手に入らず海洋生物20万匹が全滅した話などがされた。また、震災の影響を大きく受けた中、4ヶ月で営業再開を果たした話もあり、その復興までの道のりに参加者達は熱心に聞き入っていた。その後参加者達は、館内を散策し大水槽や海獣の展示などを楽しんだ。
東北応援ツアー福島県コースに参加した校友たちからは「ツアーに参加するまでは『もう何年も経っているのに、今福島に行っても震災のことを学べないのではないか』と思っていたが、今回福島県を訪れ、東日本大震災について多く学ぶことができた。また福島県の方たちが放射性物質への対策に最大限の配慮をし、生産物が安全であることを知った。風評被害に負けず前を見て進んでいる福島県に、これからは自分にできる形で『見て、買って、観光して』復興支援をどんどんしていきたい」と感想が寄せられ、東北応援ツアー福島県コースは好評のうちに終了した。
なお、校友会事務局からは田中康雄社会連携部長、古石章子校友・父母課員が参加した。