“飛行機王”と呼ばれた実業家で政治家の中島知久平(一八八四-一九四九年)の業績に光を当てた「中島知久平と国政研究会」(上・下、みやま文庫、会員外千五百円)を、県立歴史博物館専門員の手島仁さんが出版した。戦後に戦犯となったため、これまで政治家として積極的に評価されてこなかったが、その後四人の首相を輩出した本県の政治的源流をたどると、優れた先見性をもった政治家・中島知久平に行き当たるという。
現在でこそ有力な政治家を多数輩出することで知られる本県も、中島が一九三七(昭和一二)年に鉄道大臣になるまでは、一人の大臣経験者もいなかった。中島は三九年には立憲政友会の総裁に就任するが、これも本県初の政党総裁。当時の県民は中島を誇り、県内の政治家らも中島を目標とした。
手島さんは長年にわたって本県の近代政治史を研究してきたが、中島の功績があまり評価されていない現状に違和感を覚えていたという。同書を執筆した動機について「二十一世紀に中島をよみがえらせたかった」と話す。
同書の中で手島さんは、日本初の民間シンクタンクである国政研究会と国家経済研究会の創設を高く評価。これらの業績を中心に、中島の政治家としての歩みを掘り起こした。
「中島は県民が誇りをもって評価していくべき人物」と手島さん。飛行機王が築いたいくつもの功績について、多くの県民に知ってもらうことを願っている。問い合わせはみやま文庫事務局(027・232・4241)へ。