令和4年「校友の集い」では、鯖江市出身の岸本誠さん(2005年、経営卒)が「日本のDX推進状況と事例から学ぶDX発想のヒント」と題して記念講演を行いました。岸本さんは、大手企業や官公庁、自治体を中心に、完全自社スタッフによるWEBデザイン・CMS・AIを活用した、サイト構築を行なう「インフォネット」(東証グロース市場)で代表取締役会長を務める傍ら、デジタルトランスフォーメーション(DX)でも社会貢献しようと、子会社「デロフト」を22年に立ち上げ社長としても活躍しています。講演はDXがいかに重要かを、事例を交えながら分かりやすく紹介。聴講した校友からの質問にも丁寧に答え、充実した講演となりました。
記念講演会概要
DXが必要とされる背景には人口構造上の問題がある。超少子高齢化で40年後には労働人口が4割減という試算もある。今の仕事が継続できるのか。製造業、特に中小企業にとって深刻だ。
ITシステムの老朽化、IT人材の不足などの「2025年の崖」問題が迫っている。事業継承や新しい物づくりをしたくても、限られた資産ではシステムの開発、維持はできなくなる。こうした課題を解決してくことがDXだ。
DXは、デジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土をも変革すること。今ではインターネットで商品を購入することは当たり前だが、2000年にアマゾンが登場したころには考えられなかった。社会構造が変化した一つの例だ。
DXでコアビジネスの転換を図った事例として米国のネットフリックスがある。元々はDVDのレンタル宅配サービスで成功を収めていたが、オンデマンド・ストリーミング配信に舵を切り、業務効率化と顧客満足を同時に実現。世界的な成長を遂げた。
東京の店舗型商業ビル「マロニエゲート」では、ポイントカードのデジタル化とPOSシステムの統合で、ビル全体で顧客のデータがとれユーザーの利便性向上につながった。またDMやCMもアプリに統合し、コスト削減と同時に最適な来客促進が図れ、結果、賃料アップにもつながった。
中小でも、創業150年の食堂が7年かけてデータを蓄積。AIで来客数を予測しフードロスを7割削減。売り上げも5倍と「世界一IT化された食堂」として知られるようになった。
DXはややこしいと思われがちだが、デジタルを活用し、顧客満足度を向上させることで売り上げを伸ばし、業務の効率化でコストを削減し利益創出の好循環をもたらすものとしてチャレンジしてほしい。「DX認定制度」もあり、認定されると税制や補助のメリットもある。
川塚康弘(1987年 法)