立命館大学校友会

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2014年度立命館公認会計士校友会第6回総会記念講演講演録2015年3月19日

企業統治,企業価値という言葉に踊らされるな

2014年9月20日立命館大学公認会計士校友会総会
経営管理研究科教授 松村勝弘

1.最近の話題に関連して
最近の話題に関連して、『日本経済新聞』2014年6月4日号に「『企業統治指針を』、首相、成長戦略に位置付け」というのが出ていた。ここで,企業統治を成長戦略と位置づけると安倍首相は言っている。麻生財務相も言っていたから財務省の入れ知恵かもしれません。要するに成長戦略、第三目の矢、として言われているが、その成長戦略で言われていることを聞いていたら、変だなと思わずにはいられない。どういっているかというと、企業はその内部留保をため込んでいるからけしからん。そこで社外取締役を選任して、その圧力でこれを設備投資等に回させると言う。ここにおられる先生方はみんな、何と思われるでしょう。私は、「何それっ?」全然話しが合わんじゃないかと思いました。内部留保はもうすでに使った後のものです。既に負債資本の側に内部留保が、利益剰余金があっても、資産の側はもう既に使われた後で、何に使われたか。それはもちろん投資に回されているということは十分考えられるわけ。それを社外取締役が入ってきて「設備投資に回せ」なんて言っても無理。そんな会計の知識が財務省の役人も知らんのかなと思ってしまった。いかに会計学が世の中から知られていないか。財務省の役人も知らないのかと思って、すごくがっかりした。これでは恐らく成長戦略はうまくいかないだろうなと、そう思った。

2.コーポレート・ガバナンス論の隆盛
日経夕刊「十字路」という囲み記事で主流でない考え方が述べられている。全国地方銀行協会常務理事、中川さんという人が、「社外取締役は経済再生の救世主か」と言われている。そのとおりで、社外取締役を入れたら、そんな世の中うまくいくなんて、そんなばかなことはないよ、といわれている。なぜそんな規定を入れたのだろうと思うが、これがコーポレート・ガバナンス(企業統治)という時代の流れ。これは経営者の、企業のために言っているのではない。誰のために言ってるかというと、社外取締役を入れたほうが喜ぶ人たちのために。恐らくカルパース[カリフォルニア州職員年金基金]だとか、アメリカの投資銀行だとか、そういう人たちにとってはわかりやすいということで、恐らくアメリカの投資銀行向けにこういうことを言ってる。日本の経営者にとっては、やっかいなこと言い出したなというのが事実だろう。私は,これは風潮だろうというように思っていて、そういう風潮に踊らされると、日本企業の経営としては余りよろしくないのではないかなと思っている。

3.企業価値経営の流行
株主価値とか、企業価値というようなことがすごくもてはやされていて、あるいは企業価値経営というような言葉がもてはやされている。根底にコーポレートファイナンス論がある。結局はこれ経済学。根本は経済学。だからあまり現実的ではない。ところが、非現実的な経済学に基づいたコーポレート・ファイナンスの考え方がとうとうと、これまた会計学に入ってきている。DCF(Discounted Cash Flow)とかいうのはまさにそれ。現在価値会計が入ってきている。経済学は抽象的な議論をしてたら済む。具体的な議論をしていくときに、それではうまくいかないだろう。

4.将来キャッシュ・フローの割引現在価値
マッキンゼーの本の第1の原則は、企業が価値を創造するには、投資家から調達した資本について、資本コストを上回るリターンが出るようキャッシュフローを生む必要があるということであるという。企業はより速く売上高をふやし、魅力的なリターンを出せる投資機会をより多く見つけることで、より多くの価値を創造する。要は、成長率と投下資産利益率、ROICが企業価値とその創造を決めるのであると、こういうことなのだが、それはそのとおりなのだが、この場合のより多くの価値を創造するというのが、どう見てもこの文章を見ていると、言いっ放し。

5.企業価値経営の意味するもの
持ち合いが崩壊して、外国人機関投資家の持株比率が上昇している。そういう中で、やはり資本市場ということが意識されていて、EVAというのが一時期はやった。スタン・スチュワート社のコンサルティングのもとでEVAや企業価値経営がはやった。スタン・スチュワート社は、アメリカのやり方を日本に持ち込もうとするわけだから、日本企業でうまくそれが使い切れるかというと、なかなか使い切れない。EVA、経済付加価値のロジックは、これは要は[株式]市場価値を目指す。企業経営そっちのけで。ソニーなどがこれに踊らされて今日の苦境を招いた。

6.日本企業の企業価値向上の途
首切りして人件費を削って株式価値を上げると、確かに外国人機関投資家は喜ぶ。それで日本企業の経営がうまく行くとは思えない。現場・現物・現実の三現主義こそ,日本企業の経営の良さであった。これこそが,日本企業の企業価値向上の途ではないか。

2014.9.20kouenroku


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