アメリカ・アトランタ市にあるステートファーム・アDECEMBER 20246NBAダンサー 大おお西にし 真ま菜な美みリーナ。大観衆の中、プロバスケットボールリーグ(NBA)の地元チームであるアトランタ・ホークスが、熱戦を繰り広げている。その会場で、ホークス・ダンサーの一員として試合を盛り上げているのが、大西真菜美さんだ。幼い頃からダンスやクラシックバレエに親しみ、高校のクラブ活動でチアリーディングを始めた大西さん。大学時代は、立命館大学応援団チアリーダー部に所属し、チームキャプテンとして男女混成チームをまとめる一方、勉強やアルバイトとの両立に苦心した。力になったのは、同じ学科の仲間だったという。「スポーツをしている学生が多く、助け合いながら勉強していました。他のクラブでキャプテンをしている人と仲良くなり、クラブの悩みを打ち明け合うことも。スポーツを全力で頑張っている者同士、強いつながりが支えになりました」。4回生の時にはチアリーディングの日本代表を選出するテストを受け、メンバーに選ばれる。キャプテンとして世界大会に出場し、優勝を果たした。卒業後は旅行会社に就職。仕事は充実していたが、それまで情熱を注いできたものが急になくなって、心にぽっかり穴が開いたような、自分が自分ではないような気持ちになったという。「もう一度自分を取り戻そう」。そんな気持ちでJリーグ・ガンバ大阪のチアダンスチームのオーディションを受け、採用される。仕事の傍ら、チアダンスに没頭する日々が始まった。「新しいことに挑戦する喜び」を感じるうちに、生来のチャレンジ精神が湧いてきて、「もっと上を目指したい」という気持ちが大きくなっていった。「悩むより、まず行動」が大西さんの信条。仕事を辞め、アメリカのプロアメリカンフットボールリーグ(NFL)のチアリーダーを目指し、渡米した。しかし夢をつかむのは、簡単ではなかった。NFLのオーディションを受けるも、最終選考で落選。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、一時は日本のプロバスケットボールチームで活動した。2021年、クラウドファンディングで支援を募り、再び渡米。NFL3チームのオーディションを受けたが、最終選考で涙をのんだ。「落ち込んだこともありました。そんな時、クラウドファンディングやSNSを通じて『諦めずに頑張って』など、たくさんの応援の言葉をいただき、すごく励まされました」。その声に押され、道を模索していた時、日本人の当時現役NFLチアリーダーから「あなたのダンススタイルは、NBAに向いている」と勧められる。そこでNFL以外にも目を向け、NBAのアトランタ・ホークスのオーディションに参加。ついに合格をつかみ取った。NBAのシーズン開幕は10月。ホームアリーナでは、大西さんらホークス・ダンサーが試合前やハーフタイムにさまざまなパフォーマンスで会場を盛り上げる。「私たちのダンスや表情で観客の声援を一段と大きくし、選手・チームを勇気づけられたらと思っています」ホークス・ダンサーの中で、アジア人は大西さんただ一人。大西さんの活躍が、アジア、日本のファンを増やすことにもつながっている。「私をきっかけに、アトランタに住むアジアの人や日本人の方々が、観戦しに来てくださったと聞くと、うれしいです」また試合だけでなく、地域貢献活動に取り組むことも、ホークス・ダンサーの重要な役割だ。「貧しい方々に配る食事を準備したり、子供たちに向けクリスマスイベントを催したり、そうした活動を通じて地域の方々の力になれることも、やりがいです」と大西さん。とりわけアメリカの子どもたちにとってチアリーダーは、憧れの存在だ。ホークス・ダンサーの来訪に目を輝かせる子どもたちを見て、「私たちの活動が、子どもたちの夢につながっていると実感します」と言う。毎年厳しいオーディションをくぐり抜け、ホークス・ダンサーになって4シーズン目を迎えた。自身が最高のパフォーマンスを披露する一方で、現在は後に続く後輩の支援にも力を入れている。その一つとしてチームディレクターに自ら掛け合って、出身高校のチアリーダー部をアトランタに招き、試合のハーフタイムショーに出演する機会をつくった。「高校生たちの素晴らしいパフォーマンスに、会場は総立ちで大喝采。観客にとっても、また後輩たちにとっても忘れられない日になりました」と言う。「私の活動が、誰かに勇気を与え、チャレンジを後押しできれば、これほどうれしいことはありません」。NBAダンサーとして、選手だけでなく、多様な人々にエールを送っている。さん(’18産社)NBAダンサーの活動が、子どもたちの夢につながっている。
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