校友会報「りつめい」No.294
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みごAUGUST 202410それからは、もう大変でした。イベントの準備からパフォーマーのコーディネートまで仕事は本当に多岐にわたります。企画の一つ「アジアの大道芸」のために、インドまで出かけてオーディションを実施し、パフォーマーの選出も行いました。博覧会が幕を開けてからは、半年間毎日現場に詰めっきりで、運営管理に奔走しました。苦労は尽きませんでしたが、さまざまな仕事を経験し、イベント運営の面白さを実感しました。仕事をするに当たり、当時の上司によく言われたのが「空中つかみどり」という言葉です。「無から有を生み出せ」という意味で、すでに誰かがやっていることをまねするのではなく、「なんでもあり」の精神で収益を生む新しいイベントを企画することに力を注ぎました。その一つが、大阪にあった遊園地で1995年の夏季期間中に開催した「お化け屋敷」でした。それまでのお化け屋敷の常識を覆し、おふんしたプロの俳優が観客の反応を見ながら脅か化けに扮すという新しいスタイルを生み出しました。京都撮影所の美術スタッフを動員し、まるで映画のような「四谷怪談」のセットを製作した結果、予算を大幅に超過し、赤字覚悟での開幕となりましたが、営業初日、入場を待つお客さまの長蛇の列を見た時は、鳥肌が立つほどうれしかった。最終的な観客動員数は15万人を超え、大盛況のうちに終了。このアトラクションは、その後何年も続く人気イベントになりました。30歳で本社に異動した後は、展覧会事業を担当。海外の美術館や博物館から収蔵品をお借りし、日本国内を巡回する展覧会を企画・運営する業務を手掛けました。この時も、ウクライナやコロンビア、ペルーなど日本ではあまり馴染みのない国の美術館・博物館にアプローチし、他にそう装東京撮影所に設立した日本最大級のLEDスタジオ映画【推しの子】の撮影にも使用した醐はないユニークな企画を練りました。イベント営業の醍味は、お客さまの反応をリアルに感じられるところです。失敗や成功が明確に分かるからこそ、お客さまが押し寄せてくるようなイベントを実現できた時の喜びは格別でした。映画【推しの子】2024年12月20日(金)公開©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 ©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会だい業界に先駆けて挑戦した配信ビジネス業界に先駆けて挑戦した配信ビジネスその後も、新しいことに挑戦してきました。業界でも先陣を切って配信ビジネスに参入したのは、2001年でした。その1年前、グループ各社の意欲のある若手とともに、先行事例などを研究してビジネスプランを練り上げ、会社に提案していました。そして創設メンバーとして専門部署を立ち上げました。通信会社と連携し、携帯電話向けに着メロ・着うたという音楽の配信サービスから始め、次に月額500円で映像配信サービスを開始しました。サブスクリプションモデルをいち早く取り入れるなど先進的でしたが、時代に先行し過ぎてお客さまが増えず、現実は赤字ばかりが膨らみました。結局、事業は軌道に乗りませんでしたが、その過程で、さまざまな権利者と著作権について交渉するなど、現在の配信ビジネスに関わるルールや環境を整備したことが、今日の映像配信サービスの拡大につながったと思っています。

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