会報りつめい293号 デジタルブック
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屋(京都市)OM喫N(京都市)茶 YAOAPRIL 202413 今号は『RADIANT』に掲載された研究内容をご紹介します。『さわやか福祉財団』(東京都)、『つながるKYOTOプロジェクト』(京都市)といった中間支援組織が関わる居場所や、慶應義塾大学と港区芝地区総合支所の連携によって開設された『芝の家』(東京都)のような行政との連携や、助成金などの支援制度を活用する流れも生まれてきました」一方で1990年代から、子どもの貧困対策や学習支援の文脈で「子ども食堂」が各地にできるなど、居場所の対象者や目的は多様化してきたそうだ。小辻は「例えば京都市で1998年から活動を続ける『バザールカフェ』は、セクシュアリティーや国籍、年齢も多様な人々の受け入れ場所となっています。さまざまな事情で就労機会を得られない人に働く場を提供するなど、社会的な枠組みから排除されがちな人々も包摂するブレンディング・コミュニティーとして機能しています」と言う。小辻は全国の「まちの居場所」を調査。参与観察を通じて有効性を検討するとともに、自らも設立や運営に関わり、その促進に尽力している。「2020年からのコロナ禍で、『まちの居場所』は危機的状況に陥りました。集まることが制限される中で、持ち帰り弁当を提供する『子ども食堂』をはじめ、活動を継続する努力もなされていますが、補助金などの支援なしには成り立たない従来の居場所づくり活動の課題もより明白になりました」と語る。例えば2003年から続く「まちの学び舎ハルハウス」(京都市)は地域に深く浸透し、高齢者の孤立を防ぐ場として大きな役割を果たしてきた。しかし経営は、強い信念を持った設立者のボランティアと助成金・寄付金で成り立っており、誰にでもできるものではないという。「持続可能性を考えた時、新たな運営のかたちを探る必要があります」と小辻。可能性を見るのが、「喫茶 YAOMON」(京都市)のように、飲食店が提供する「まちの居場所」や、不動産会社などの民間企業が運営するコミュニティーカフェだ。「経済活動の一環として、あるいは本業に生かせる活動として居場所を運営していく。そうした居場所が今後は必要になるのではないか」と提起する。2022年、小辻らは「コロナ禍における『まちづくりカフェ事業』の効果と課題の検討」をテーマにプロジェクトをスタートさせた。「京都市が展開してきたまちづくりカフェ事業を引き継ぐかたちで実践型研究に取り組もうというものです。『まちづくりカフェ』が地域住民と行政の人がつながる場として機能する。そうした新しい居場所の在り方を模索していきたいと考えています」ぽかぽか茶孤立・孤独を防ぐまちの居場所

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