国内約1万8000軒もの宿泊施設の情報を掲載し、ホテル・旅館から航空券とセットになった宿泊パッケージまで、多種多様な旅を提供する検索・予約サイト「Yahoo!トラベル」。隼田正洋さんは、現在トラベル事業部門の責任者として「Yahoo!トラベル」を統括。高級宿泊施設・飲食店の検索・予約サイト「一休.com」のマーケティングも担当している。高校3年生の時、立命館大学に新たに政策科学部が開設されると知って、迷うことなく未知の学部を志望した。大学では環境問題について学ぶゼミで、瀬戸内海にある豊島の産業廃棄物問題について研究した。「現地を自分の目で見て、問題に向き合い、解決策を模索する経験を積む中で、集めた情報をただ発信するのではなく、それを自分がどう考えるかが大切なのだと学びました」。課外では、立命館大学放送局(RBC)に所属。映像番組を制作してキャンパスで上映するなど、自分で映像をつくる面白さを実感したことが映像制作会社への就職につながった。好きなことを仕事にして走り抜けた20代。「でもこの業界には面白い番組をつくる天才がいます。私はそうはなれないと思い知った時、30歳を区切りに新しくキャリアをつくり直そうと考えました」と明かす。くしくも30歳を目前にした2005年は、YouTubeのサービスが始まった年だった。「これからはインターネットで映像を見る時代がやって来る。それに携わってみたい」と、ヤフーへの転職を決めた。これまで「Yahoo!ニュース」を皮切りに、数々のコンテンツにプロデューサー・ディレクターとして携わってきた隼田さん。新規事業や経営企画、マーケティングなど、多様な業務にも挑戦してきた。「部署が変わると、違う業界に転職したかと思うほどダイナミックに仕事が変わります。最初はできないことばかりですが、取り組む中で自分のスキルが増えていく。それがうれしくて、めちゃくちゃ楽しく仕事をしてきました」と笑う。「Yahoo!トラベル」のマーケティング責任者になったのは2019年のことだった。「当時日本の観光分野のGDP貢献度は、GDP全体の約7%にも及んでいました。特にインターネットは、良くも悪くもユーザーの反応がダイレクトに返ってきます。そうした巨大なマーケットに自社の価値を提供できることが面白かった」とやりがいを語る。しかし配属されて1年もたたないうちにコロナ禍となる。予約の激減に加えてキャンセルも相次ぎ、売り上げのめどが全く立たなくなった。隼田さんは、「もう旅行業はダメなんじゃないか」と思うほどの危機感を覚えたという。その中で起爆剤の一つになったのが、いわゆる「Go Toトラベルキャンペーン」だ。開発方針を立て、システムの仕様や要件を決定し、各専門部隊に指示するのが隼田さんの役割だった。「『Go To トラベル』は制度が複雑で、それをシステムに組み込むのが非常に厄介でした。感染拡大の状況によって日々要件が変化する中で心掛けたのは、今分かっている情報をできるだけ正しく伝えること。社内にも、またお客さまに対しても、丁寧にコミュニケーションを取ろうと肝に銘じていました」。無事準備を整えると、7月のキャンペーンスタートと同時に予約が殺到した。「それを見てみんなが旅を求めていたんだと実感しました。それと同時に現実を離れて楽しむ旅や観光がいかに日常の生活を潤し、活力を与えていたのかが分かりました」コロナ禍を経た今、それまでインターネットを使っていなかった層がオンラインで検索・予約するようになるなど、多くの変化を感じている。「お客様にストレスなく目的の宿を予約いただけるよう、ウェブサイトのリニューアルを行いました。これからも分かりやすさ、使いやすさをピカピカに磨き込んでいくつもりです」とすでに次に向けて動き出している。「挑戦したいことは、まだたくさんある」と隼田さん。「近い将来、AIを使って旅行プランをインターネットで提案できるようになるかもしれないし、まだまだ旅行業界に新しい価値を提供していける。チャレンジしがいがあります。そのためには常に新しい知識を吸収し、成長し続けていかなければならないと思っています」と語る。「今後どんな事業を任されたとしても、責任を持ってそれを成長させられる経営スキルを身に付けていきたい」と、未来を見据えている。DECEMBER 20234さん(’98政策)「観光」という巨大マーケットに 価値を提供するのが面白い。LINEヤフー株式会社 トラベル統括本部 トラベル推進本部 本部長 隼はや田た 正まさ洋ひろ
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