DECEMBER 202222ように、もっともっといろんな可能性にチャレンジしてほしいと思っています。私自身、30歳を過ぎてから教員免許取得を目指すという、ある意味「無謀」なチャレンジをしていますが、その決断があったからこそ、今の自分があると思っています。里井 指導する上で一番大事にしたいのは、生徒たちがグラウンドに来たがっているか、楽しんでいるかですね。グラウンドに足が向かへんなという子も、もちろん時期によってはいます。部員が約100人いますが、レギュラーになれるのは9人ですから、その100人分の2年半の人生、楽しんでほしいと思っています。なので、僕が声をかけるのは控えの子ばかりですね。秋武 やはり主役は選手です。いつも彼らに「このチームは誰のものや」という話をします。もちろん学校の協力もあるけれど、このチームはお前たちのものだと。だからこそ、お前たち自身がつくり上げていきなさいと。その中では、指導者はあくまでもサポート役に過ぎません。選手たちがつくり上げていくことに面白さも感じてほしいですし、チャレンジしてほしい。それがやりがいや達成感につながると思っています。彼らが大人になって当時の話をする時に、「あの時しんどかったな」というよりも、「あの時めっちゃ楽しかったな」「もう一回やりたいな」、そういう感じでお酒でも飲んでくれたらいいなと思っています。川崎 技術指導のみならず運営の仕方なども含めて、正解や100点はないと思っています。預かった子どもたちに対して全力で接する、この子たちが高校を卒業して幸せな人生を歩んでいくために、何かできることや言えることがあればという想いで接すること、それが僕らにできることです。─高校野球とは? 甲子園とは?家田 高校野球を通じて、人としてどう成長していくか、そういう部分を学ぶことが非常に多いですね。10回のうち3回打てば名選手という、失敗ばかりのスポーツを自ら選んでやっているわけですから、そこに挑戦していくのは、それだけで意味があると思っています。また、今夏に指導者の立場で初めて甲子園を経験させていただいて改めて感じた球場に入った時のあの雰囲気、観客の方々。あの場で見た生徒自身の表情から、間違いなく自身の成長につながる場所、目指すべき場所であると感じました。里井 ある種人生を懸けた勝負なのではないかなと。もちろん、「上手」「下手」とか「勝ち負け」というのはあるのですが、その門を叩くというのは一大決心であると思います。これだけ注目されて、これだけ人の心を動かす、勝負に懸ける熱い想いが毎年繰り広げられる。球児にとって、甲子園という舞台を目指して野球をすることに意味があって、なんていうか尊いものかな、という感覚です。秋武 野球人にとって、「高校野球」は本当に特別だと思います。一つのことに熱中する、没頭する、そういう場をわれわれも提供し続ける必要があると思っています。甲子園は、私は監督としても選手としても行ったことがないので「生徒たちに行ってほしい」という気持ちは強い。ただ、甲子園だけにとらわれて、大切なものを見失って野球をするのはちょっと違うかなという思いもあります。やっぱり「野球」を大事にする、それに尽きると思いますね。川崎 高校野球を通じて、その後の人生を幸せに生きていくための力を養ってくれれば、それが一番だと思っています。甲子園は「頑張ったご褒美」というイメージで出させてもらっているのですが、いろんな人の支えがあり、いろんな方が応援してくれているのですから、出る以上は県の代表にふさわしい良い試合をして結果を出さないといけない。高校野球であれだけ苦しいことを乗り越えて、最後にあんな良い思いができたという成功体験があれば、社会に出た時も、苦しい時に踏ん張れる力になってくれるんじゃないかなと。それが甲子園に出た生徒にとって何よりの財産になるんじゃないかなと思います。─立命館大学のつながりを感じる時里井 私は大学4年間、そして立命館宇治のコーチ・監督として17年間立命館に身を置かせていただいています。現役時代はもちろん、高校野球でも勝ったら立命館大学の校歌が流れます。もう二十数年、立命館の校歌を毎回毎回歌わせていただいています。そのたびに「立命館に育てていただいた」、そういう思いになります。川崎 全国でいろんな形でお会いする先輩、練習試合していただく先輩もいますし、自分も学校の募集活動で他県に行った時にそこで会う立命館の先輩だったり同級生だったりと、いろんなお話をさせていただくのが楽しいですね。また、プロ野球で頑張っている後輩たちの活躍も新聞などで必ずチェックしますし、後輩が出ている試合が近くであればやっぱり見たいなと思います。野球、そして高校野球・生徒に一層真剣に向き合おうと思わせてくれる、エネルギーをくれる存在であり、いつまでも支えてもらっています。─立命館大学とは?家田 人生を豊かにしてくれるものだと思っています。私が何より大切だと思っているのは、人と人との結びつきです。そういう時間や場所をこの大学で経験させてもらいましたので、立命館大学は私の人生にとって大きな存在です。里井 いまだに憧れですね。立命館大学を選んだ理由は、「京都で野球が強い」という憧れからでした。また、時代の流れや子どもの変化にも対応して、とても柔軟な学校経営をしていると感じています。「歩みをとめない立命館」に私自身も身を置けて、将来、立命館を卒業していくであろう生徒の成長を見守れている今、とてもやりがいを感じています。その子たちも卒業して「やっぱり立命館の血が流れているな」、そういう風に感じる社会人になってくれて、その子たち自身も「自分の子どもを立命館に入れたいな」と思う、そういう憧れであり続けてほしいなというところも
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