会報りつめい289号 デジタルブック
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PROFILE韓国出身。2015年、映像学部を卒業し、チームラボ株式会社に入社。「カタリスト」としてアート展示の企画から実施まで空間演出に関わる全体業務に携わり、プロジェクトの進行・まとめ役を担う。2018年、東京・お台場で開催した「森ビル デジタルアート ミュージアム:チームラボボーダレス」や、2020年、韓国・ソウルでの「チームラボ:LIFE」など数々のプロジェクトに携わる。2022年11月に中国・北京にオープン予定の巨大ミュージアム「チームラボ マスレス」でも「運動の森エリア」の統括を担当する。DECEMBER 202211チームラボ株式会社カタリストオムジョンシクさん「発想を転換する」大切さを学んだことが 「役に立たない機械を考案する」 「紙コップの新しい使い方を考える」 そんな課題に望月ゼミで挑戦し、 今の糧になっています覚を体験してもらいたいと考え、あえて巨大でジャンプの影響が全方位に及びやすい仕組みのトランポリンを制作しました。完成後、視察を兼ねて展示の様子を見に行った時に目にしたのは、大勢の子どもたちが、大人の心配などものともせず、夢中になって飛び跳ねている姿でした。当初は安全性を懸念する声がありましたが、子どもたちはルールで縛らなくても自力で危険を察知し、それを避けて遊んでいました。カオスの中に秩序があって、平和を感じられる。そんな世界を体現している子どもたちを目の当たりにし、「自分たちが作った作品は楽しいんだ」と認められた気がして、喜びが込み上げました。作品づくりは、人間と自然、人と世界との関係性を模索し、それをアートやサイエンス、テクノロジーと融合させて表現すること。目の前にある現象を、デジタル技術を使ってもっと面白くできないかといつも考えています。目指しているのは、ゼロから何かを創り出すことではなく、元々ある「1」を人に感動を与える「10」や「100」にすることです。そのためにアンテナを広げるだけでなく、深く張り巡らせて、ふつうなら目にしても認識しないような小さな出来事も見過ごさないよう心がけています。「どうしてこういうことが起こるんだろう」「自分はどうしてこれを面白いと感じるんだろうか」と深く掘り下げた結果、お客さまが見たこともない作品ができるのだと思っています。作品を楽しんでいるお客さまの笑顔を見た時には、いつも驚きと感動があります。現在は、3年がかりの大規模プロジェクトが大詰めを迎えています。目下3カ月にわたって中国・北京に滞在し、商業施設内に設けた1万㎡ものスペースに、身体ごと没入する感覚を体験できる巨大なアート空間をつくっています。私が統括する「運動の森」エリアでは、プロジェクションマッピングし、複雑に形を変える遊具の展示を進めています。今回のテーマは「Massless(質量ゼロ)」。デジタル技術によってあらゆるものがデータ化され、リアルな空間に人がいなくても物事が進む社会になりつつある今だからこそ、質量や物理的な境界線を再認識する体験を創り出したいと考えています。立命館大学に入学した時から今まで、目の前にある面白いこと、楽しいことを無我夢中で追求しているうちにたどり着いたのが今いる場所です。だから今、チームラボの一員として仕事をしていることも含め、すべて「必然」だったと感じています。これからも既存の価値観に縛られず、自分が「面白い」と思うものを考え続けていきたいと思っています。『マルチジャンピング宇宙』teamLab, 2018-, Interactive Digital Installation, Sound: DAISHI DANCE目の前にある「1」を 人に感動を与える「100」にする

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