会報りつめい288号 デジタルブック
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AUGUST 20229語学力と外交力で 厳しい交渉を戦い抜くもあるのか」と学ぶことも少なくありませんでした。若かった私にとっては見るもの聞くもの全てが興味深く、不便さもまったく苦になりませんでした。外交官の重要な仕事の一つは、赴任した国の情勢をさまざまな角度から知り、分析することです。毎日、新聞や雑誌、テレビの報道などから政府の方針や日本をはじめ他国との関係についての情報を収集し、精査してまとめる中で、外交官としての基盤をつくることができました。通訳業務も数多く経験しました。語学力だけでは有能な通訳にはなれません。最初は「あそこはもっと違う表現にした方が良かった」と反省することばかり。失敗を胸にとどめておいて、次回に向けて自分なりに改善していく。その繰り返しで少しずつ力を磨いていきました。その成果が試される大きな機会が巡ってきたのは、38歳の時です。ルーマニア大統領が来日し、天皇陛下と懇談されるにあたり、その通訳を私が務めることになりました。外交儀礼や想定される懇談内容について徹底的に勉強し、迎えた当日。長い通訳経験の中でこの時ほど緊張したことはありません。無事に終えた時、ほっとすると同時に大変重要な仕事をさせていただいたことを心から光栄に思いました。ルーマニアでの勤務を経て、自分の強みといえる語学力(ルーマニア語)が培われた一方で、痛感したのは英語の重要性でした。国際外交の場で英語は不可欠です。外交官として将来の可能性を広げたくて北米転勤を希望し、幸

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