会報りつめい288号 デジタルブック
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東アフリカの内陸に位置するブルンジAUGUST 20226共和国は、長く続いた内戦を経て、今、平和の定着と国家復興の途上にある。認定NPO法人テラ・ルネッサンスの川島綾香さんは、2021年11月からこの国で主にストリートチルドレンを対象に子どもの保護と自立支援を行っている。国際支援に関心を持つようになったきっかけは高校生の時、世界史の授業でソビエト連邦崩壊後に難民となった人々が困窮するニュース映像を見たことだった。「世界にはこんなにも違う環境で生きている人がいるんだと衝撃を受けました」。その後、JICAの元青年海外協力隊員に話を聞く機会があり、海外で人のために働く協力隊にひそかな憧れを抱いた。その気持ちは立命館大学で学ぶうちに確かな決意に変わった。「国際関係学部には、在学中に留学や、休学して海外に飛び出していく学生がたくさんいました。そうした先輩や同級生に刺激を受け、『自分は何をしたいのか』と真剣に考えました。企業に就職して開発支援に関わる道もあるけれど、それよりは早く現地に行って、何が起きているか自分の目で確かめたいと強く思いました」と語る。授業でNPOやNGOについて学んで興味を持った矢先、学内にあった校友会報「りつめい」で偶然見つけたのが、立命館大学の卒業生でテラ・ルネッサンスの創設者である鬼丸昌也氏の記事だった(※)。鬼丸氏の「ひとり一人に未来をつくる力がある」という理念に深く共感し、同団体でのインターンシップを志望。卒業後も非常勤職員として勤務しながら青年海外協力隊の試験に挑戦した。3度目にして合格を勝ち取り、2018年、アフリカのウガンダ共和国に派遣された。現地では、住民が安全な水を利用できるよう支援する活動に尽力した。「不便な中でも工夫しながら生活している人たちと接してたくましさを感じる一方で、日本にいた時は考えもしなかった『死』を身近に感じました」と振り返る。2年間の活動中、日本とは異なる社会環境や価値観に触れ、「泣いたこともあるけれど、それ以上に面白かった」と川島さん。実感したのは、日本の常識や自分たちの考えが必ずしも現地の人にとって最善ではないということだ。「おかげでいろいろな視点で物事を捉えられるようになりました」と成長を語る。帰国後もアフリカへの思いは変わらず、2021年秋、今度は職員としてテラ・ルネッサンスに採用され、ブルンジ共和国に飛んだ。現在取り組む「子どもの保護と自立支援プロジェクト」では、年間数十人を受け入れ、洋裁やバイク修理、小規模ビジネスなどの職業訓練を実施し、経済的自立を後押ししている。すぐに「目に見える成果」が出ないことが自立支援の難しいところだ。「災害や戦争直後などには緊急支援が必要とされますが、私たちがブルンジで取り組んでいるのはその後に繋がる支援です。手に職をつけてもらうことで、この先10年、20年、自分でお金を稼いで生きていけるようになることが大事だと考えています」と言う。とはいえ支援できる人数は限られているという現実に、もどかしさを感じることもある。そんな時、思い返すのは「誰のためでもなく、私がやりたいからここにいる」ということだ。「自分のしたことで周りの人が幸せになったら、私も幸せになれる。それが私にとっての『生きる意味』ではないかと思うようになりました」これまでミシンに触ったこともなかった人が職業訓練で洋裁を覚え、洋服を作れるようになっていく。「彼らに『収入を得られるようになったら何がしたい?』と聞くと、皆口をそろえて『家族を助けたい』とうれしそうに言うんです」。その顔を見ることが、諦めずに続ける力になっているという。世界で困窮する人がいることを知っていても、多くの人は「自分には何もできない」と思って行動しない。「まずは自分がどうありたいかを真剣に考えてみることです」と川島さん。「私は、同じ世界に苦しんでいる人がいることを知りながら何もしないことが苦しかったから、『自分にできることをしよう』とここに来ました。自分の気持ちに向き合えば、取り組みたいことが見えてくるのではないかと思っています」今後について尋ねると、「私も自分と向き合い続け、そして理想を決して諦めない」と改めて決意を口にした。その屈託のない笑顔の奥に強い覚悟が見えた。※校友会報「りつめい」249号

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