会報りつめい288号 デジタルブック
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AUGUST 202210ケニアの難民キャンプを視察記者会見でスピーチをする片山さん“ALL JAPAN”の一員として 力を尽くす運なことにカナダ・トロントやアメリカ・ニューヨークでも駐在経験を積むことができました。この経験が、後に国際会議など多くの国々を相手にした外交で生かされています。私が初めて日本の代表団を率いて国際会議に参加した時の議題は、地球環境問題でした。会議が始まると、先進国と途上国の意見は真っ向から対立しました。会議に備えて資料を読み込み、日本政府の立場をまとめて方針を立て、できる限りの準備を整えていたものの、連日厳しい交渉が続きました。少しでも自国に有利な条件を導き出そうと、どの国も必死です。こうした外交の場で求められるのは、まずは高い語学力です。専門的な知識を勉強しておくことは当然ですが、それを英語で表現できなければ、交渉を戦い抜くことはできません。それに加えて各国代表団の立場も考慮し、前向きに議論を進めていく力も必要です。会期後半、議論が深まるにつれて次第に各国が目指している目標が見えてきます。それを見極めつつ、さまざまな論拠を持ち出して、日本としてどうしても譲れないポイントを押さえながら、各国が納得できる落としどころを探りました。難しい交渉を乗り切り、合意にこぎつけた時は大きな達成感がありました。2016年7月、初めてアフリカ大陸に赴任しました。外務省に入って36年、そのうち20年以上海外で勤務してきた2020年からは、東ヨーロッパのモルドバ共和国で特命全権大使を務めています。モルドバ共和国と日本との間に外交関係が結ばれてから30年、日本はさまざまなかたちでこの国を支援してきました。私に課せられた使命の一つは、これまで築いてきたモルドバと日本との関係を多方面に拡大していくことです。大使館が主体となって交流の機会をつくるにとどまらず、民間企業やNGO・NPOの活動を側面支援し、交流拡大をお手伝いすることにも努めています。私も、ケニアへの赴任が決まった時には驚きました。しかしアフリカでの3年余りの間に、東ヨーロッパや北米では得られなかった貴重な経験をたくさん積むことができました。その一つが、開発援助に関わる仕事です。首都ナイロビにはアフリカ地域における国際機関の本部が集結しています。また政府開発援助(ODA)をはじめ、日本の機関や団体もケニアで開発支援に取り組んでいます。そうした日本の支援プロジェクトのお手伝いをする機会が数多くありました。うれしかったのは、国際機関や各団体で活動する魅力的な日本の方々と交流できたことです。インフラ整備や衛生、教育などさまざまな分野で支援に尽力されている方々と一緒に仕事をしたり、時には食事をして話を伺う中で、皆さんがどれほど国際支援を生きがいに感じ、情熱を持って取り組んでおられるかを知ることができたのは、本当に幸運でした。

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