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DECEMBER 202111講演で大学生や高校生に伝えているのは『多様性』の大切さ。革新的なアイデアは、標準から外れたところから生まれてきます。遊びも、無駄も、重要です富士通株式会社 デジタルソフトウェア&ソリューションBG  スポーツビジネス統括部 統括部長藤原 英則さん大阪府出身。1993年産業社会学部を卒業後、金融機関に勤務。2000年、富士通株式会社に入社。金融・公共・法人・海外のシステム営業を担当する。2015年、東京オリンピック・パラリンピック推進本部の新設に伴い、スポーツビジネス企画・推進の統括部長に就任。スポーツの新 ビジネス創出に関わるとともに、世界初の「AI体操採点システム」の 開発・導入に携わる。スポーツ庁健康増進策検討会議の委員をはじめ日本新体操連盟理事、筑波大学非常勤講師等も務める。「AI体操採点システム」の開発現場での藤原さんを作って渡辺さんをはじめ国際体操連盟の要人の前で披露。「ジョークだったのに」と驚いた渡辺さんの顔は今でも覚えています。誰もが「あり得ない」と思っていた「未来」を提示してみせたことで、その場にいたみんなに共感が広がったのを感じました。「AIを使った体操採点システム」の開発プロジェクトが本格的に動き出したのは、そこから。けれど完成までには本当にたくさんの困難がありました。その一つはもちろん、技術開発です。体操は回転やひねりのわずかな角度の違いで点数に差が出ます。その上、連続する技の組み合わせによっても評価点が変わります。私たちは、選手の動きを緻密にセンシングして3次元で可視化。身体の動きや姿勢を正確に捉え、技の名前や難度、その評価を瞬時に導き出す世界初のシステムを作り上げました。また、技術開発と同じくらい困難を極めたのが「ルールを変える」ことでした。どれほど素晴らしいシステムを開発しても、人間の審判員が採点するという体操界のルールを変えなければ、使ってもらえません。以前、海外向けのシステム営業に携わったとき、その国の法や規制・文化に適合せず、技術を導入できないという問題に何度も直面しました。「技術開発」と「ルールを変える」こと。その両方に取り組む重要性を実感した経験が、このプロジェクトにも役立ちました。長い開発期間を経て、ようやく「AI体操採点システム」が国際体操連盟に正式に採用されたのは2019年のことです。現在は、実際の試合でも活用されています。「AI体操採点システム」の核心である「人の動きをデジタルで可視化」する技術の用途は、競技の採点にとどまりません。例えばトレーニングの質を劇的に向上させることも可能になります。その結果、選手のレベルが上がれば、試合を見るファンや競技をする人も増えるでしょう。一方で、難度や点数が明確になれば、観戦の魅力も高まります。体操以外にも多様なスポーツに応用できることに加え、よりリアルなアニメやゲームの制作にも生かせます。テクノロジーを通じて多様なスポーツビジネスを拡大することは、スポーツの産業化を実現するとともに、スポーツ振興や健康増進にもつながります。ひいては少子高齢化による労働力不足や医療費増大、年金財源不足などさまざまな社会課題の解決にも貢献できる。「スポーツを通じて世界を変えていける」。そんな大きな可能性を感じています。最近は、プロジェクトを通じて学んだことを次代を担う若い人に伝えることも大切だと考えています。大学などで教壇に立ったとき、自分の経験から得た教訓として必ず伝えるのは「世の中の当たり前を疑いなさい」ということです。新しいものを生み出すには、固定観念にとらわれない発想が欠かせません。私の考えるイノベーションは、「今まで見たことがない」けれど、「やればできた」こと、しかしその「過程で物議を醸す(賛成派と反対派に分かれる)」もの。この物議を皆が共感できるストーリーに作りあげ、一緒にその物語を紡いでくれる仲間を増やし、大きなひとつの方向性に束ねてデファクトスタンダードにすることです。若い皆さんにもぜひこのイノベーションを経験してほしいと願っています。私たちが次に描くビジョンは、スポーツからさらにヘルシーリビングへと当社の技術を展開していくこと。人が健康に暮らすそのすぐそばに、いつも当社の技術がある。そんな社会の到来を目指し、まだまだ走り続けます。

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