DECEMBER 202110日本でスポーツを産業にしたい世界初・AIを使った体操の採点システムを開発「AI体操採点システム」のアプリケーション画面とんどがシステムエンジニアという情報通信企業で、素人同然の私にとって、仕事は覚悟していた以上に過酷でした。最初の3年は何度「もう辞めよう」と思ったか分かりません。その中でいつも心掛けていたのは、これまで誰もやらなかったこと、人が避けることにあえて挑むことです。「難しい」といわれるお客さまのもとに率先して足を運び、ニーズや課題を教わりました。そうしたお客さまは厳しいけれど、一度認めてくださると、とことんかわいがってくださいます。結果的に最初のお客さまとのお付き合いは、15年にも及びました。新たな挑戦のチャンスが巡ってきたのは、2015年。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を5年後に控え、社内に東京オリンピック・パラリンピック推進本部が新設されました。ゴールドパートナーとして大会をサポートしていくに当たり、企画の責任者を任されたのです。こだわったのは、一過性のシステムを作るのではなく、レガシーとして未来に残せるものを生み出すこと。ICTというテクノロジーで、日本のスポーツ市場の拡大に貢献するようなイノベーションを起こしたい。日本においてスポーツは、教育として位置付けられてきた歴史があり、産業としてはいまだ発展途上です。日本で「スポーツを産業にする」、世界的なスポーツの祭典はその絶好の機会だと思いました。まず半年間、オリンピック・パラリンピックのあらゆる関係ICTを生かしたスポーツビジネスの可能性を探る中で、もう一つ、大きな転機が訪れました。公益財団法人日本体操協会の専務理事だった渡辺守成さん(現・国際体操連盟会長)と出会ったことです。「21世紀はロボットが体操競技を採点しているかもね」という渡辺さんの言葉に、「面白い」と思いました。まだ誰も足を踏み入れていない領域に挑戦すること、そして何より「スポーツの世界を変えられるかもしれない」という予感に胸が躍りました。会社に持ち帰り、半年後には採点システムのプロトタイプ者や企業のもとに赴いてお話を伺い、何ができるかと知恵を絞りました。その一つとして企画したのが、日本のプロバスケットボールリーグに当社のICTを提供し、バスケットボールの振興と地域創生を実現することです。その一つとして、ICTを使い、地方都市で開催された試合の映像や音、振動など現場の臨場感をありのまま遠隔地の会場に再現しました。このシステムがあれば、各地のスポーツ施設や競技場に新たな用途が生まれます。スポーツを目当てに多くの人が集まれば、地域活性化も可能になるはずです。
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