校友会報「りつめい」No.285(2021 AUGUST)
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英語を教えるのではなく、「学びAUGUST 20217山碕さん自身が英語の重要性を最初に実感したのは、大学1回生の夏休みにオーストラリアを一人で旅した時だった。「初めての海外で英語はまったく分からず、何をするにも苦労の連続で、自分がいかにちっぽけな存在かを痛感しました。それが、どこの国へ行っても自信を持ってやっていける力をつけたいと強く思ったきっかけでした」と言う。その後、大学のプログラムで1カ月間のメルボルン短期留学を経験し、さらにアメリカ・シアトルに留学。英語力があれば、世界が大きく広がることを体感した。そしてこの留学中に岡田さんと運命的な出会いを果たす。対照的な性格ながら互いを尊敬し、刺激を受け、「いつか一緒に起業しよう」と語り合う仲に。大学を卒業し、株式会社リクルートキャリアで経験を積んだ後、その約束を現実のものにした。現在の事業にたどり着くまでには、迷った方」のコーチングによって英語力を伸ばす。これまでにないサービスが支持を集め、急成長を遂げている株式会社プログリット。創業からわずか4年余りで受講生は延べ1万人を超え、現在も増え続けている。山碕峻太郎さんは学生時代に留学先で出会った岡田祥吾さんと意気投合し、後に二人で同社を立ち上げた。「英語学習において重要なのは、『良質なコンテンツ』と『その人に合った学習方法』、そして『継続すること』の三つ。これまでの英語教育のほとんどは『コンテンツ』にフォーカスされてきました。私たちは、後の二つに着目。エビデンスに基づいて一人ひとりの目的に合致した最も効果的な学習法とカリキュラムを提案するとともに、それを継続できるよう伴走支援することを主軸に置いています」と山碕さん。正しく学べば誰でも英語を習得できる。しかし自分に合った学習法を見つけられないこと、そして続けられないところに課題があると考え、徹底してサポートするプログラムをつくり上げた。こともあった。「私たちが心から信じ、情熱を持って打ち込めることは何か。二人でとことん話し合う中で浮かび上がってきたのが、『英語ができれば世界が変わる』、そして『やりきれば、必ず達成できる』という確信でした」と山碕さん。学生時代の海外経験に加え、前職で仕事を「やりきる」ことで成果を出す経験を積んだところも二人は共通していた。「『英語』と『やりきる』の二つを組み合わせて『日本で一番英語力が伸びるサービス』をつくる。その信念でスタートしました」こうして英語教育界に新風を吹き込んだ山碕さんだが、元来は「なるべくリスクを回避したい」慎重派。その山碕さんが起業を考えるようになった転機も大学時代にあるという。海外に関心を持ったことをきっかけに、仲間と国際協力団体「IROHA」を設立したことだ。一過性の支援ではなく、自国の問題を自分たちで解決していけるよう後押しする持続的な支援が必要であると考え、カンボジアに学校を設立し、教育機会の創出に取り組んだ。その中で「組織をつくり、そこに関わる人が輝くことが何よりうれしいと気付いた」と明かす。プログリットを創業し、170名もの社員を抱えるようになった今もその思いは変わらない。「一緒に働く社員に『人生が豊かになった』『成長した』と感じてほしい」という思いが全力で走り続ける原動力だ。輝かせたい対象は社員から受講生、さらに社会へと広がっている。「いずれは社会人に限らず、子ども向けの教育やその親御さんのコーチングにもチャレンジしたい」と山碕さんは言う。「英語学習は早く始めるほど習熟スピードも速いし、何より早く身につけた分だけ、その後の人生を大きく変えられるところにやりがいを感じています」。「やりきる」経験が達成感や自信を生み、それが新たな目標に挑戦することにつながっていく。その可能性は英語学習にとどまらない。「目指すのは『世界で自由に活躍できる人を増やす』こと」。そうビジョンを描く山碕さんたちが、これからの教育を変えていくかもしれない。

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