校友会報「りつめい」No.285(2021 AUGUST)
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西原はまた、情報抽出技術を活 今号は『RADIANT』に掲載された研究内容をご紹介します。アでテキストデータを単語に分割し、「日本語能力試験」に則って各単語のレベルを推定。それらを統合してマンガごとに日本語の難易度を導き出した。それをもとに、学習者の条件を与えると、その日本語能力に適したレベルのマンガを推定する。このプログラムの効果を検証するため、西原は中国で日本語を勉強する中国人の大学生を対象に実証実験も行っている。「プログラムで推奨したアニメで日本語を学習したグループと、ランダムに選定されたアニメで日本語を学習したグループで日本語能力試験の結果を比較したところ、前者の方が学習の前後で点数の伸び幅が大きくなることを確認できました」もう一つ、西原がマンガ・アニメを活用して開発した日本語学習ツールとしてユニークなものに、日本語の「役割語」を習得する支援プログラムがある。外国人にとって日本語習得の壁の一つが、役割に応じて使って良い言葉が異なることだ。例えば英語で“YOU”を意味する日本語は、話者の役割や属性によって「あなた」「あんた」「お前」「君」「貴様」など多様な表現で使われる。西原は、役割語を入力すると、それが使用されたマンガのコマを自動的に抽出するプログラムを開発。インターネットで無料公開している。「お前」はどのような人がどのような場面で使っているのか。マンガなら一目瞭然で理解でき、使い方を学べるというわけだ。さらに西原は、カナダで日本語を学んでいる20歳代の若者と日本で日本語を学んでいる中国人の20歳代の若者を対象にこのプログラムの効果を検証した。その結果、プログラムを使って学習したグループの方が、教科書を使って学習したグループに比べて役割語の学習効果が高いことが実証された。そこで西原らは、「ずきんずきん」「針でちくちく刺されるような」など約20種類の痛みの表現を列挙し、その中から患者が自身の症状を選択することで痛みをより正確に把握するインタフェースを考案した。痛用して新たなインタラクションをデザインする方法についても研究している。その成果の一つが、病院の理学療法士との共同研究で開発した患者の「痛み」を記録するインタフェースである。「理学療法士の方々にとっての課題は、問診で患者からうまく症状を聞き出せず、効果的なリハビリに結びつけられない場合があることでした」と西原。理由は、患者の中には自分の痛みを適切な言葉で表現できない、あるいは痛みの程度や経過を正確に説明できない者が少なくないことにあった。とりわけこのインタフェースは、ボキャブラリーが少なく、表現力が発展途上にある子どもや外国人などへの問診に有効だという。「痛みの表現は国際的に使用されている『マクギル疼痛質問票』の項目から抽出しており、多言語化も容易です。外国人観光客が増加する昨今、日本の病院で外国人を治療する際に非常に役立つと考えています」と西原。今後の医療現場での活用に期待がかかる。膨大な情報の中からいかに有益な情報を抽出し、社会に役立つものにできるか。西原の研究の真骨頂はまさにここにある。みの表現の他、痛みの部位や強さを入力する機能を備えたプログラムを開発。その結果、問診の精度が高まるとともに問診時間の短縮も可能にした。AUGUST 202113患者が痛みをより正確に表現するためのインタフェース学習者に適したマンガを推薦し日本語習得効果を高くする。インタラクションをデザインする

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