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生活様式が大きく変わる中、1週間に150分以上の運動時間を確保できている人はどのくらいいるだろう。座った状態を1日2時間以内に留めるというのも、デスクワークの人や高齢者にとってはハードルの高い目標だ。自分や家族の健康を保つためには、どのような習慣を取り入れればいいのだろうか。増える自宅時間 高齢者の認知機能を守るためには?「高齢者の認知機能の低下の発端は、老化による筋肉の衰えにあると考えています。加齢に伴う筋力の衰えやメタボリックシンドロームなどが重なり、徐々に体を動かすのが難しくなる。そうして活動量が減少すると、軽度の認知症のような症状が起こり、それがさらに活動量を減らす原因になる。負の悪循環に陥ってしまうのです。このサイクルを断ち切るためには、まずは生活の中に運動習慣を取り入れることが大切です。ご高齢の方におすすめしたいのが、ラジオ体操第二や踏み台昇降です。ラジオ体操第二は、早歩きでウォーキングをするのと同程度の運動強度があります。家の中でも行えるので、ぜひ週に3日以上を目標に行っていただきたいですね。また、踏み台昇降も、朝と夕方の1日2回、1週間に計140分間行うことで、認知機能が十分に改善されるということが研究で証明されています。さらに、地域によっては、住民が合同でダンスを行っているところもあります。Web上で他の人とつながりながらダンスを楽しむような取り組みもなされているので、それらに参加されるのもいいかもしれません」高齢者に関しては、まずはWHOの推奨している週150分を目標に運動を習慣づけることが大切だという。では、ラジオ体操第二や踏み台昇降では物足りない現役世代にはどのような運動が効果的なのだろうか。強い負荷が脳を活性化 カギは乳酸にあり橋本教授が研究を進める中で明らかになったのは、認知機能の向上には運動の強度と時間が重要な因子として働いているということだ。「研究の中でわかっていることの一つは、軽い運動を短時間するよりも、強度の高い運動を30分以上行うことが認知機能の向上には効果的であるということ。そしてもう一つは、同じ運動でも、30分以上一定の強度で行うより、短時間でも時折強度を上げながら行う、いわゆるインターバル運動が認知機能に効果的であると立命館大学スポーツ健康科学部橋本健志教授いうこと。つまり、適度な運動を適度な時間行うよりも、短時間でも強弱をつけることが大切だということです。その理由の一つとして、私は乳酸が挙げられるのではないかと考えています。乳酸とは、激しい運動をした際に筋肉から発生する成分です。脳が安静状態にある時は、糖分をエネルギーにして機能しますが、ひとたび激しい運動をすると糖の吸収率が悪くなるのです。その時、糖の代わりになるのが乳酸です。運動をすると神経活動が活発になり脳の活動がアクティブになります。そこにエネルギーとして乳酸が供給されれば、脳の活動が活発になり、認知機能も向上するのではないかと考えています」読者の中にも、仕事や考え事が行き詰まった時に体を動かすと、ぱっとアイデアがひらめいたという経験がある人もいるのではないだろうか。このメカニズムについても、橋本教授は乳酸との関連を指摘している。そして、日々の運動でも、認知機能を向上させるためには乳酸が発生する程度の強度が必要だという。「おすすめなのがスロートレーニングです。スロートレーニングとは、動作をゆっくり行うレジスタンス運動で、大きな筋力増強効果が得られることで知られています。同じ動作でも動きをゆっくりにするだけで負荷はかかりますし、乳酸も発生しやすくなります。コロナの感染予防対策として体を動かす機会が少ない今だからこそ、普段よりも負荷の強い運動の習慣をつけていただきたいですね」運動習慣のモチベーションアップのために、 目指すは「栄養循環の可視化」超高齢化が進む日本では、健康寿命を伸ばすための研究はますます需要が高まってくると考えられる。橋本教授は今後の展望について次のように語る。「健康的な生活のために、人々の行動変容のモチベーションを高めるような研究ができればと考えています。健康に気を使って、ほんの少し運動をしたり、食事に気を使ったりするだけでは、体に変化が見られずどのように作用しているのかがわかりません。そのためやる気が起きにくく、運動や食生活を変えても続きにくい。そこで栄養や運動の効果を可視化できるようなテクノロジーを開発できないかと考えています。例えば、身につけるだけで血中の成分を解析できるようなツールで、運動時に乳酸が発生している様子や、食事で摂取した栄養が体中に行き渡る様子が実際に見えるようになれば、モチベーションアップにつながるのではないでしょうか」昨今のめざましく進歩する科学技術を使えば、体内を随時モニタリングできる日はそう遠くないだろう。しかし、実際に健康的な体づくりには、運動や食事など基本的な生活習慣が欠かせない。新しい生活様式の一つに、まずは週150分の運動習慣を取り入れるところから始めてみてはいかがだろうか。APRIL 202129能が低下? 取り入れるべき運動習慣とは

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