東急ハンズの文化と独自性
(1) 東急ハンズは、既存流通小売業のカテゴリーに納まらない、独自の原点・コンセプトを持っている。
誕生の背景には大量生産時代のモノ余り現象の反面、本当に自分が欲しいモノが買えないという状況があった。創業者で元東急不動産社長の故松尾英男氏は街づくり事業を完結させたいという「夢とロマン」のもと、住人の生活文化の満足のため、『手』に関するあらゆるモノを集め、生活を豊かにするための素材を提供しようと考えた。
自分が欲しいと思うものを自分たちが納得いくように売るという店をつくりたかった。流通の常識を破った品集めと店づくりを行い仕入販売員制度と相談販売を導入し、同時にチャレンジ精神を掲げた。
当時お手本となる店は存在せず、 流通業の経験がない素人集団が全国各地に出向き、ありとあらゆる分野でホンモノの品を現金で仕入れた。
(2) 基本理念、コンセプト
「お客様の 生活文化の創造を お手伝い致します」
顧客主導主義のもと、お客様の求める価値(満足)の対象は、 creative lifeであり、お客様の代理人であるべきだとしている。
ハンズの文化としては、3つのハンズマインドが重要。第一に買い場の精神(自分たちが売りたい物を売る売り場ではなく、お客様が買いたいと思うものを置く買い場)。第二にコンサルティングの精神、更にナイからはじまる精神と続く。
小売の世界に始めて「夢、ロマン」を持ち込み商品開発にチャレンジした。ハンズの特徴は「氷が解けたらどうなる?」という問いに、二つの真理、「氷が解けたら水になる」と「 氷が解けたら春が来る」という理性と感性の両面を持つことである。
さらにこの理念、文化を支えるシステムとして、徹底した権限委譲である仕入販売員制度を採用した。
(3) 名古屋ハンズの二店舗を運営する㈱三交クリエイティブ・ライフの紹介
ハンズ事業の源流は時代を超えて、人間があるべき本質に基づく大切な考え方に根ざしている。
ハンズには普通の流通小売の店には無い何かがあり、ハンズ流のフロアー(売場)づくりに努めるとともに、今後の変化への対応はPOSだけに頼らず、現場でお客様のニーズを良く見て聞いて仕入に活かしていく。I Tがどんなに発達しても文化や感性といったアナログ的な面は、むしろその重要性と価値を増す。
最近は新たなチャレンジとして「男の書斎」、「私の時間」、「地球研究室」などのセレクトコーナーの展開も行っている。
(4) 今後は小さくともキラリと光る会社、存在感のある強い会社をめざし、「生活文化のオンリーワン」をビジョンとして、
ハンズの基本原理、原則に忠実に、しかし独り善がりにならずに進みたい。