成長支援

2021/September

VOICE

支援を受けた学生の声

新型コロナウイルスに苦しむライブハウスの今を伝える

奨学金採択テーマ
ライブハウスとコロナウイルス禍における、音楽業界人の生活史収集と分析

産業社会学部 4回生 新山 大河さん

ホームであるライブハウスの危機

新型コロナウイルスのクラスター発生場所として、真っ先にバッシングを受けたのは大阪にあるライブハウスでした。未知のウイルスを目前に、ライブハウスヘの誹謗中傷が行われ、音楽業界は今でも甚大な風評被害を受けています。大学入学以前、私自身もロックバンド「Shout it Out」のベーシストとして音楽活動をしていました。コロナ禍に入って、多くがフリーランスとして活動する、音楽業界人の生活は過酷なものへと一変しています。数多くの友人が危機にさらされる中、社会学を学ぶ学生として何かできることはないのだろうか。そう考えた際に、彼ら/彼女らが正解のない中で、いかなる選択肢の中から、いかなる合理性をもって生活しているのか、と問いがうまれました。これをきっかけに人生史を聴き取る生活史調査といった、社会学的方法論のアプローチで調査を開始しました。

今だから、今でこそ、聴ける人生を綴じたい

活動は大きく次の3つのプロセスを経て行いました。①文化社会学の蓄積に触れること②様々に行われてきた質的研究(今回はインタビュー調査)の方法論を総合し、自身の生活史調査の方針を定めること③実際に調査を行い、文字起こしデータのセッションをすること。調査は音楽業界の現状を包括的に把握するため、バンドマンのみならず、照明、PA、ライブハウススタッフの方々にも協力していただきました。今回の調査で得られたデータの一部は、立命館大学先端総合学術研究科教授である岸政彦先生が立ち上げられた「東京の生活史」(岸政彦編,2021年,筑摩書房)プロジェクトヘと寄稿し、9月21 日に出版されました。この本は、「150人が語り、150人が聞いた東京の人生」を綴じたもので、「いまを生きるひとびとの膨大な語りを一冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集」です。発売直後にも関わらず、増刷が決定するほど好評で、多くの人の手に渡っていることを嬉しく思います。

ささやかな個人の人生から、社会に光を当てる

現在も同じテーマで活動を続けており、年度末の学会報告に向けて研究を進めています。音楽の世界から大学の門を叩いた自分だからこそ、描ける世界を記述していきたいです。来年以降も大学院で、音楽業界人への生活史調査を通じて、社会学における高い研究成果を挙げることを目標にしています。自分を育ててくれた音楽業界、ひいては社会へと還元していきたいです。今回、成果のアウトプットを通じて、蒔いていた種が発芽したというのでしょうか。点と点が繋がり線になり、線と線が繋がり面になった手応えがあります。ボーダーを一つ超えることができました。もちろん、これはスタート地点に立ったに過ぎず、面と面をつなげ、立体的・有機的に個性を伸ばし、さらに向こうへ進めるよう、今後も励んでまいります。

※掲載内容は取材時のものです

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