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林はやし 勇ゆう吾ご総合心理学部 准教授※ 今号は『RADIANT』に掲載された研究内容をご紹介します。て2人の発言内容を検知・解析し、対話が滞ったり学習に関係ない発言が続いたりすると、効果的な対話を促すキーワードを提示する仕組みになっている。また林は、「言葉」以外にも学習効果を高める介入因子を検討。人の身体からさまざまな情報をセンシングし、複数のコミュニケーションチャネルを使ったマルチモーダルなインターフェースを協同学習システムに生かそうとしている。例えば「感情表出」という因子もその一つだ。学習場面では、褒め言葉などのポジティブな言葉に加えて、うれしそうな顔といったポジティブな感情を表す画像を提示すると、学習者の学習意欲や理解度が高まることを実証した。さらに林が注目したのが、「視線」である。互いに離れた場所にいる2人がパソコンのモニターを介して協同学習をする際、2台の眼球運動測定器を同時に使って視線の動きをリアルタイムで検知し、互いのモニターに表示するインターフェースを開発した。「離れた場所にいる研究テーマ:人間同士の協同問題解決に関する研究、対話エージェント/ロボットとのコミュニケーションに関する研究、メディアイクエージョン(Media Equation)に関する研究、教育用の擬人化対話エージェントを用いた学習支援と実践、SNS上の発話・行動データの解析とその活用に関する研究 専門分野:認知科学、ヒューマンインターフェース・インタラクション、感性情報学、ウェブ情報学・サービス情報学、学習支援システム、教育工学、社会心理学 ※2021年2月時点。2021年4月より総合心理学部教授。立命館大学研究活動報『RADIANT』(ISSUE13サステイナブル,pp.6-7,2020.3)より一部変更し、転載RADIANT(ラディアント)は、立命館大学の多様な研究活動を紹介する研究活動報として2015 年11月に創刊号(特集:アジア)を発行し、今年で7年目を迎えます。RADIANTは、「光を放つ、光り輝く」という意味を持つ形容詞です。今後、立命館大学の研究成果が光り輝く未来を生み出す一歩に、また、これからの世界を照らす一助になるという意味が込められています。今後も一つのテーマを切り口に、立命館大学で展開されている研究を幅広く紹介していく予定です。 ▶http://www.ritsumei.ac.jp/research/approach/vision/activities/相手とのコミュニケーションを成立させる上では、お互いがどこに注意を向けているのかという共同注意が重要だといわれています。私たちは、学習者がお互いにどこを見ているか、相手に対する注意を与える手法を構築。学習者の視線を誘導し、相手に対する共同注意を促すことで対話が活性化することを確かめました」。拠に基づく批判などのコンフリクト(対立やあつれき)を起こすような論争的議論が協同学習に有効であるという先行研究から、効果的なコンフリクトを引き起こす議論を誘発するような協同学習システムの開発視線の動きをリアルタイムで互いのモニターに表示するに着手しています」と林。現在は、研究室に所属する学生とコンフリクトを引き起こすためのプロンプトの提示方法を研究するプロジェクトを進めている。目指しているのは、議論に不慣れな学習者が建設的な議論を行えるよう「議論のやり方」を教える教師役=PCAの開発だ。まずは議論に熟達したエキスパートによる理想的な論争的議論から学習を深めるプロトコルを導き出し、「議論モデル」を構築するという。それをPCAに実装して効果を検証していく計画だ。例えば未来の教室では、林が開発した自律的なPCAが人に代わって教師の役割を果たしているかもしれない。あるいは臨床心理の現場でのグループセラピーやカウンセリングにも応用できる可能性は広がる。林の研究成果が社会に実装される日が待たれる。APRIL 202113認知科学の知見を応用しインタラクションを促す インターフェースを開発。「最新の研究では、異なる根

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