バレエ界のアカデミー賞とも称されるブノワ賞。権威あるその賞を木田真理子さんが掴んだというニュースが、日本中を沸かせました。今、世界で最も注目を集めるバレエダンサーの一人となった木田さんが、そのトロフィーを手にするまでには、ある大きな試練がありました。
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バレエ界のアカデミー賞とも称されるブノワ賞。権威あるその賞を木田真理子さんが掴んだというニュースが、日本中を沸かせました。今、世界で最も注目を集めるバレエダンサーの一人となった木田さんが、そのトロフィーを手にするまでには、ある大きな試練がありました。
「マリコ キダ」―。名前を呼ばれ、実感がないまま、ステージに上がった。でも、授賞式で手渡されたトロフィーは、ずっしりと腕に重かった。今年5月、バレエ界で最も権威のある賞、ブノワ賞の最優秀女性ダンサー賞に輝いた。日本人が受賞するのは、史上初になる。
「お姉ちゃんがやっているから」という理由で、4歳でバレエを始めた。最初はレッスンに戸惑ったが、上達を感じると、次第に楽しくなった。16歳で若手ダンサーの登竜門、ローザンヌ国際バレエコンクールに挑戦し、受賞。これをきっかけに、サンフランシスコバレエ学校へ留学。アメリカ中から優秀な生徒が集まるこの学校で技を磨いた。「賞をとって留学すれば、プロになれる」。そう思って日本を飛び出した。ところが現実は厳しく、プロが所属するバレエ団の入団試験すら受けることができなかった。すでに実績のあるプロダンサーしか受け付けていなかったからだ。まだ実績のない彼女に門を開いてくれる場所は、ほぼなかった。「プロになるのは、無理かもしれない」。完全に打ちのめされ、大学進学を考えた。
それでも諦めずに門を叩き続ける姿勢が、ついにカナダのバレエ団への入団を決めた。一年目から主役を踊るチャンスを得て、居心地もよかった。しかし「“一流の振付家と作品を創り上げる”とはどういうことなのか」それをどうしても知りたくてスウェーデンへ。そこで世界的に有名な振付師、マッツ・エック氏の新作“ジュリエットとロミオ”でジュリエット役に抜擢された。マッツ・エック氏の17年ぶりの全幕バレエ新作とあって、世界中が注目する大作だ。ところが初演の半年前、予期せぬ事態に直面する。ひどい肉離れを起こし、歩くことはおろか、ベッドに寝たきりになってしまった。舞台の創作はすでに始まっている。「復帰できるのか」。どうしようもなく気持ちは沈んでいった。そんな時、頭に浮かんだのはこれまでの自分の姿だった。「いつだって怪我を乗り越えた後には、ワンステップ成長した自分がいた。今回だってこの怪我を乗り越えれば」――。自分を信じる力が、リハビリ生活を支え、彼女を再び舞台に立たせた。そのジュリエット役で見せた鬼気迫るほどの演技力とダンスが、世界のブノワ賞を掴んだ。